墨絵


ある時多分35歳頃ふと墨絵を描きたくなった。習字の道具と墨絵の本を買ってきて
狭い縁側さきに広げた。それを見ていた妻が何をやるのと質問してきた。墨絵だといった。
すると意外な返事が返ってきた。どうせすぐ止めるくせに。カチンと来た。
思い切りひっぱたいてしまうかと思った。


本と道具はしまってしまった。私は墨で割り箸を使って画用紙に裸の漁師が列になって
浜辺を歩いている光景を描いて毎日新聞社応募したことがあり入選した事がある。
中学生のことである。絵はうまいほうである。小3できりんの絵を描き郡で何か高い賞
を貰った。中学で抽象画を描くのを好んだ。高校で版画をやった。

息子の描いた絵を少し手を入れて住友生命の全国子供絵画コンクールで銅賞を得た。
賞品で岩石の詰め合わせセットを貰った。息子と共に喜んだ。





そうゆうことで何か絵を描くことに挑戦しようと思ったのも不思議ではない。


描くということは集中して対象をよく見なくてはならない。
自分を集中して世の雑事から暫し離れる。精神症や疾患を予防する。その時墨絵を開始
していたらその後来る会社のトラブルから自分を保ち且つ孤独に耐えられたと思う。

会社を辞めないですんだかもしれない。それを思っている私は今61歳である。


鍋島卓 作