The 911



ゲイトは閉鎖されていて空港の中に入れない。ダラス空港内でサングラスを売っている
妻を時間どうり迎えに来たのに。

ゲイトの周りにはナショナルーガード風のいでたちで男達が5-6人程たむろしている。
あたりには乗客も何時もいるセキュリテもいない。「What UP?」(どうかしたんですか)
と聞いても誰も答えない。これはなにかあったなと直感する。 

ゲイト前の横に設置してある20台ぐらいの飛行状況を知らせるモニターを見る。
なんと各フライトがキャンセルの表示ではないか。そして次のモニターもキャンセルサイン。
これは全モニターの全便がキャンセルではないか! 全くこんなの長く飛行場に出入り
しているが見たことがない。カメラと思ったが今手に持っていない。前代未聞だ、残念だ。 

胸騒ぎがしている。 しかし誰もいない。乗客も空港のお店も閉まっている。
ボランテアで空港内のガイドの仕事をやろうと説明会に出席して12時に終えてこのゲート
で13時に妻と会う約束であった。妻はこの入り口に近いサングラス屋で働いている。
丁度ゲイトの隙間から店は見える。店には誰もいない。クローズしている。 

これは確かに何かあったな。情報が得られない。 異常と不安を感じて家に帰ろうと決めた。
駐車場に戻り帰路30分の道のりを車でとばした。


それは2001年9月11日である。





そうだと思い車のラジオを着ける。 ラジオの声が興奮している、ニューヨークとかぺタゴン
とかしきりに言っている。内容がよく分からない。大統領はフロリダ州とかも言っている。

なんだこれは? 

そうこうしている内に家に着いた。妻は未だ家には居ない様子だ。一体世の中どうなってんだ。
今朝は早くから妻の勤め時間に合わせて車で空港内の電車の駅まで送り届け私はその足
で空港内のガイドのガイダンスに昼まで出席して妻を迎えに行ったのである。
確かに空港内はセキュリテイのみで人影なし。異常である。

ガレージを開けて家に入る。テレビをつける。- 何だこれは!- テレビに見入る。
世界貿易センタービルに大型飛行機が突っ込んでいる。それも二つのビルに各々。
炎上している。ペンタゴンにも。他の場所にも飛行機が墜落している。これはハチャ目茶だ。
飛行機で体当たり。 神風特攻隊だ。 誰が何でこんなことをしたか? 

しばらくすると電話が鳴って妻からだ。今ミニヤードから電話していますと。徒歩10分たらず
の裏のスーパマーケットまで車を出した。 ガレージも車も熱い。

妻の説明によると空港内の店の主任が慌てて寄ってきて「今日はクローズだ」と言って皆を
各家に送り届けたのだと言った。
エアポートのCNNテレビで何かしきりにやっていて黒山の人が見入っていたと妻が言う。

妻いわく「店番もあるからそこを空けるわけにも行かないし」ソマリアから来ているマホメッドと
いう主任が送り届けてくれたがガレージのオプナーが私の乗ってきた車にあったので家に送り
届けてもらったが家には入れずミニヤードに行き買い物をして家に電話をしたと言うことでした。 

テレビを見ていてその内タワーが燃え出しタワーが地中に滑り込む様に消え失せた。
その瞬間砂塵と黒煙とが立ち上がった。 まわりの空間に水の流れのように流れ込む。
その猛り狂った砂塵のモンスターに飲み込まれないように全力で逃げている人々の姿。
雲仙の土砂流と同じ光景だ。背面に巨大な死神が迫っている。 ゲームではない。 

若い黒人女性のあの必死に疾走し死と戦う真剣な顔。走っている者は振り返られない。
砂塵と逃げるものとの間にそうゆうモーメントファクターがあるのだろうか。
同じく全力疾走していた者が上手く道路わきの開いてるお店にトッサに横へひょいと入って行って
砂塵の魔を肩透かでかわした若い白人女。 さすがだ!あの抜け目の無さ。
パニックの中の知覚と行為。二人の女性の同一状況下においてその行為の差異に社会的背景を
感じる。ともあれ二人とも生存したことを祈る。

片や両手を上げて踊り狂うアラブ系某国家の小太りの中年女。何があそこまで即喜ばしたのか?
よく分からない。あそこまで価値を遊離させたものは一体なんなんだ。よく分からない。

あの踊りはいつまでつずけられたか?



鍋島卓 作 6月1日2004年